樹液酒場

夜、ら〜めんを食べようと出掛ける。
我家の前には、それはそれは立派なクヌギがあり、現在もコクワやハナムグリが樹液酒場にやって来る。
外で家族を待っている間、そのクヌギを眺めるのが私は好きである。
今日もたま、そのクヌギを眺めながら家族が出てくるのを待っていた。
もう9月だから、まるまると太ったボクトウガの幼虫が、忙しそうに動き回っている。
その横で、申し訳なさそうにコクワガタが樹液をすすっていた。
彼等はこのあと冬篭りに入る訳だから、いつまでも名残惜しそうに樹液酒場から帰れなくなっている。
ヨツボシケシキスイは既に冬の準備に入ってしまったのか、さっぱり姿を現さない。
よくよく樹液を見てみると、既に盛りを過ぎてしまったのに、のこのこと姿を現せた小さなカブトムシが、樹液酒場でお見合い相手を待っていた。
流石にもういないだろう・・と、私の小屋に飛んできてそのまま居候となった、カブトムシの彼女を紹介してあげることにした。
紹介するや否や、なから強引にカップルとなったふたり・・。
彼女は早速たまごを産む準備に入ったようだ。
彼はといえば、役目を果たせた安堵感からか、もう3つ目のゼリーを頬張っている。
生まれた子供たちは、春になったら森に返してあげよう。
行く夏を、このカブトムシと共に惜しみながら、コオロギの奏でる秋の音に耳を澄ませるのであった。