ムシ関係ではないのですが・・

11日の土曜日に、栃木県立博物館で行われた「調べる・守る-とちぎの両生爬虫類」シンポジウムを拝聴してきた。


トウキョウサンショウウオの調査・保全の発表や、カエル探検隊の活動報告など盛り沢山だったが、わたし的に気になったのが「水田のニホンアカガエルとツチガエルの保全を目指したHEP適用の可能性」の発表である。


HEPとは「ハビタット評価手続き」という意味らしい。
そもそもハビタットってなんだ?っと思ったら「生息地」だそうだ。
初めから「生息地評価手続き」と書けば分かり易いと思うのだが、どうして一々横文字で幕を掛け様とするのだろうか。


さて、このハビタット評価、アメリカで開発されたものらしく、生態系を定量的に評価する手法だそうだ。式は次の通り。


ハビタットの価値(HU)=ハビタットの質(HSI値)×面積


HSIは0.0〜1.0で0は保全対象生物が生息できない状態で、1は生息に適した状態なのだそうだ。
このことから、ニホンアカガエルとツチガエルが側溝に落ちることなく、スムーズに水田に行けるようにする為に、水田脇のコンクリート側溝に蓋をしてHUを上げたそうだ。


ここまで聞いて、分かる人には分かるはずだ。水田脇にコンクリート側溝がある時点でHUは0.0に極めて近い。増してや、蓋などしてしまった時には、HUは負(マイナス)に転じる。


机の上で考えると、こんなことも分からなくなるいい例だ。


なぜなら、アカガエルもツチガエルも、側溝があるから生息していける生き物なのだ。
いけないのは、この側溝の状態。つまり、コンクリートか素掘り(土)かのはずである。
蓋のあるなしは、彼らの繁殖にはほぼ関係していない。
アカガエルはちょうど今の時期に、用水路の水底で♂が♀の訪れをじっと待っているのだ。そして、そこで♂と♀が出会い、早春に産卵をする。
ツチガエルは用水路の水溜りでオタマジャクシの状態で越冬するものもいる。彼らは用水路に水が溜まっていないと生息できない。


どちらのカエルも、側溝がコンクリートで出来ていると、その生息に極めて重大な影を落とすのだ。
コンクリート側溝は水理的に、水がスムーズに流れるように勾配と流量が計算されているため、よほど施工業者の腕が悪くない限り、水溜りはできない。だいいち、それではお役所の検査に通らないから、まずコンクリート側溝に水溜りは有得ない。
つまり、側溝がコンクリートで計画された時点で、ハビタットの評価なんてする意味も必要もないのである。


根本的に、お役人のウケなんか気にしないで、ダメなものはダメと言えなくて、何が守れようか。


それよりなにより、日本の農業を守らずに、水田の守り方を考えるとは本末転倒である。
農業有りきの自然保護ではなく、自然有りきの農業であることに、もうそろそろ気付いてもよいのではないか。
それでは農家が大変過ぎて、農業をする人が居なくなるではないか。
それならば、公務の民営化ばかり考えずに、農業を公務にすればよい。日本の農業は、公務員が守るべきだ。不景気だから公務員になるなどという不届者も減る筈だ。
そうすれば、養老先生の仰るとおりに、参勤交代ができるではないか。
極論かも知れないが、若者を徴兵し農業に従事させることも、今の日本には必要かも知れない。そんなことを考えさせられたシンポジウムであった。