ホワイトカレー

私が子供のころ、少し離れた駄菓子屋でなぜかカレーを売っていた。
カレーと言っても所謂カレーとは違い、どういう訳か白かった。
作っていたのはヨネばあちゃん。ある時その白いカレーの作り方を尋ねたことがある。
「企業秘密・」ただそうとだけ答えてくれた。
基本料金は30円、10円でジャガイモのサイコロ切りがトッピングされる。
通になると、そこへ更に10円のラメックをトッピングして味わう。
これらをトッピングしないと所謂素カレーである。
素カレーとは、またの名をビンボーカレーともいい、ルー本来の風味を楽しむにはうってつけの食べ方だ。
要は具なしカレーである。
その白いカレーは、こども達の間では「ヨネカレー」とか「ババカレー」と呼ばれ親しまれていた。
‥そんなヨネばあちゃんもいまではもういない。だからもうババカレーも食べることができない‥そう思っていた。

そして今日、食卓に運ばれてきたその皿には、かつてのババカレーを彷彿とさせる白いカレーが。
色はまさしくババカレー。具の多さとライスだけがババカレーとの違いを主張していた。
嗚呼、我が青春のババカレー、今まさに再会す只々涙‥。
っと、口に運んだ瞬間。
ちが〜う!これはババカレーなんかじゃない。ただの白いカレーだ!
わたしがそう憤ると妻が一言「‥そうよ。」
嗚呼、あの懐かしきババカレーは、もう口にすることは出来ないのだろうか。
優しく微笑んだあの「企業秘密」を聞けなかったことが悔やまれてならない。
ちなみにババカレーは、決してカレーの味なんかしなかった‥。>じゃ、なんでババカレーなんて言うの!