こぶたたき

先週は栃木県内でのこぶたたきを試みた。
車での交通が認められているところまで行き、後は徒歩で山道を散策する。
当初の予定を大きく外れて、気が付けば目の前に温泉宿が飛び込んできた。
まるで千と千尋の神隠しよろしくたたずむ旅館を眼前に、しばし唖然としてしまった。
顧みれば、あの時・・そう、雨が降り出した時に引き返せばよかったのである。
しかし、もう少しもう少しと思いながら来てしまったここは、車道を通りおよそ10kmの
工程である。沢沿いを下れば概ね半分の道のりで済むのだが、激しい土砂降りの雨の中、
沢沿いを下るのは危険極まりない。
仕方なく、車道といっても未舗装の道をひたすら歩くのであった・・。


・・あれから1週間、私はもはや、林道を歩くのは御免だと思っていたが、悪友が
どうしてもヒメオオが見たいと言うので、仕方なく車まで行ける林道、そう、かの有名な
F県のH林道・・今更伏せ字にしてもしようがないが、そこに行ったのである。
私はアタマからヒメオオを諦めていたので、ビーティングネットだけ持って林道に入った。



目ぼしいコブ材を見つけてはビーティングをして進む。


途中、親子連れに会った。どうやらヒメオオ採集に来ているらしい・・。
悪友には悪いが私はヒメオオに用事がないので、先を譲る。


幾度か追いつきながら、少年と話をしているとビーティングに興味があるらしい。
父親は気が気ではないようだが、私は少年にその面白さを伝えた。



「ほら・・、こうやって、こんな枯れ枝を見つけて叩けば、カミキリが落ちてくるんだぞ!」


少年の目はビーティングネットに釘付けになった。
ビーティングネットがなくても、道の上で枝をワサワサすれば採れるぞと教えてやると、
少年は目をキラキラと輝かせ、夢中で枝をワサワサし始めた。


・・しまった。(^^;;


もはや少年の独壇場である。先日、温泉でコケて名誉の負傷(?)を負った私の足では
到底少年に敵う筈がなかった・・。(T-T)


まぁいいじゃないか。(^^
これで彼の心にコブヤハズカミキリが棲んでくれれば、それはそれでいいのである。
・・しかし、これはこどもだから言える事。
私と少年の間で、彼の採りこぼしをひたすらワサワサしまくる悪友に殺意を抱いたのは言うまでもない。(--メ


「お前はヒメオオ狙いだろ!」


私の叫びも、広大なブナ林に虚しく吸い込まれていく、そんな採集行であった。