本気でオオトラ

台風が過ぎ去っていった・・。
これで季節は一気に秋へと変わってゆく。
昆虫採集もそろそろ終盤戦、今年も性懲りもなくオオトラなんぞを探す。
とりあえずカミキリボーズを避けるため、それなりに普通種を摘めるポイントに立ち寄って見る。
この時期でも、結構カミキリはいるものだ。
キスジトラ・ウスイロトラ・エグリトラ・ニイイジマトラ・キイロトラ・ハンノアオ・ヤツメ・キッコウモンケシ・アカハナ・ソホ・・

2〜3時間森を彷徨っただろうか・・。
オオトラの気配はぷんぷんなのだが、一向にヤツは現れない。
っと、そこにウラジロモミの林を縫うように飛ぶスズメバチを発見!慌ててネットを振り回し追いかける。
ゲット〜!!(@@;
・・しかし、本物のススメバチであった。(^^;;

そろそろ疲れたので帰ろうと、車へ向かい笹薮をこいでいると、藪の中に新鮮な葉をつけた、大きなモミの枝が落ちているのを発見!
近寄って見て見ると、ビンゴ!折れた部分に樹皮の裏側を喰い走る食痕を確認。
オオトラ材に間違いない!・・しかし待てよ。この折れた元の所にいたら・・。
そう思い、重たいからだでツキノワグマよろしくモミによじ登り、折れた根元を切り落としてみた。
するとどうだろう、根元には食痕は走っておらず、折れたところに、小さく蛹室らしきものが見えている。
小枝でつつくと、見事に蛹室であるのが分かった。
慎重に慎重に刃先をすすめる。生木だから手はヤニだらけだ。
パッキっと言う音とともに材が割れた・・。

なんてことだ・・。既に蛹室はもぬけの殻だった。
もしかして、折れた拍子に蛹が落ちたのではないかと、笹を掻き分け探してみたが、見付かる筈もない。
恐らくは、既に羽化しており、折れた際にこれ幸いで羽脱してしまったのだろう。
しかし、よくよくこの材を観察してみて気が付いたことがある。
オオトラは、枝先に産卵するのではないだろうか・・。
幼虫は比較的若くてやわらかい枝先から食い始め、やがて幹へと達する。
枝で充分事足りる場合は、そのまま枝で蛹室を作り羽化する。
そんなシナリオではないかと考えて、改めてモミを見上げてみた。
するとどうだ、ところどころからヤニを滴らせた枝があるではないか。
きっとあれも彼らの仕業にちがいない。
しかし、居ることは明白なこの場所で、何も生木にノコ刃をたてる必要もないだろう。
いつかこの場所で、必ず彼らをネットに納める日を夢見て、帰路に着く自分であった。